2006冬 アメリカ西南部をまわる旅(5)

ラスベガスで見つけたトランス系のお店

 ニューハーフを職業としていない人たちが集うトランス系のお店(女装系のお店)は日本の特徴で、海外にはそういうところはほとんどないというのが一般的な理解です。当事者が集まって、イベントとかパーティは行われるけれど、恒常的なお店はほとんどないというのがもっぱらの理解です。しかし、数少ないながらも存在はしているわけで、今回レポートするラスベガスのお店は、その数少ない一例だと思います。
 ラスベガスはカジノの街・・・それだけで理解してしまわないように。こういうトランス系のお店が存在する街でもあるということ。
 もちろん、カジノはごく普通に開かれている。ほとんどのホテルがカジノ場を持っている。しかし、ラスベガスは、子ども連れの家族でもバケーションを楽しめるように、遊園地の設備やパフェという割安のビュッフェ形式のレストラン、ミュージカル、マジックなど、さまざまなショーがあったり、いたって健全な都市なのだと私は思った。実際、ラスベガスの中心の通りであるラスベガスストリップは安全な通りだとされている。夜の「女性」の独り歩きでも、とくに怖いことはなかった。

← ライブドアの前社長、ホリエモンこと堀江貴文氏が、2006年1月初旬、ラスベガスでも1,2を争う高級ホテルであるベラジッシオに泊まり、このホテルの貸し切りルームで賭額無制限のカジノをやったとされている.それから10日ほどあとに、ライブドアに強制捜査が入った。左の写真はベラジッシオ.30分おきに噴水ショーが行われる。私にはとてもここに泊まれる資力はないが(とはいっても1泊2万ぐらいで泊まれる)、ショーは無料で見学できるため、それを見に行った.真冬の夜でも、このような軽装でも「ちょっと涼しすぎるかな」ぐらいの気温だった.昼間は無理すれば半袖でもだいじょうぶだ.ネバダ砂漠のなかに忽然とつくられたリゾート都市は暖かい.


↑ 黒人のトランスの人がいても当然なのだけど、私は初めてお会いした.

 アメリカのトランスジェンダーのコミュニティは実にインターナショナル
 東京・新宿や大阪、その他、名古屋、豊橋、福岡、札幌などにあるトランスジェンダーが集って語らい楽しむお店は、日本に特有の形態で、他の国にはほとんどありません。もっとも、タイの場合には、普通の街中で、普通の仕事をしていていも、ほとんど偏見や差別を受けることなく生活しているため、ことさらに「特別に」集うお店の必要性はないともいえます。
 イスラム圏やアフリカ諸国などでは、トランスすること自体がほとんど困難で、ひっそりと隠れてやっているであろうと思われるところもあります。欧米では、トランスするからといってことさらに排除されることはないですが、タイのように普通の仕事の場ではまだ困難で、そのために「当事者が集う場所」が生まれます。この点は、日本も似ています。ちがうところは次の点だと思っています。
 欧米では、日本にあるような「トランス系のお店」に当事者が集うという風習はほとんどなく、当事者は、パーティやイベントを催して、そのときに集うという形であるようです。オランダ・アムステルダムに女装した方がママさんをやっているところがあるのですが、集ってくるお客は、その多くはゲイの人で、トランスの当事者は日常的にはみかけません。
 

 また、ニューハーフのショーなどをやっているところもありません。ちなみに、ニューハーフのショーということでいえば、規模、芸術性など、タイの右にでるところはないでしょう。日本のそれよりあるかに充実しています。

 ところが、アメリカのラスベガス(ラスベガスストリップという中心部の通りからちょっと離れたところ)に、当事者が集っているお店がありました。ただ、雰囲気は、日本のそれとはちがっているようです。
 この写真に写っているトランスの人たちは、はじめは従業員かと思っていました。しかし、お客の相手をするでもなくドリンクをつくったり運んだりしているわけでもないのです。ドリンクなどを出してくれるのは、カウンター内にいるママさんだけです。ママさんというのは、最初はネイティブの女性かと思ったのですが、聞いてみると当事者とのこと。でも「内緒ね」というしぐさをしていました。男性客も6,7人いたのですが、その男性客に対しては、女性として通しているのかもしれません。
 それぞれの人が語りあっていたり、ミュージックに合わせて踊っていたり、あるいは、男性客と語らっていたり、好きずきに過ごしていました。

↑ こちらは白人のトランスジェンダー.私(161cm)と比べて身長が高いですね.

 この日はクリスマスイブ。とはいっても、ラスベガスの街は、とりたてて特別な日のようではありませんでした。店内がクリスマスのデコレーションになっていたのが、そういう日だということを表しているというところで、日本のイブの方が「いかにもクリスマス」というイメージをもったものでした。ちなみに、クリスマス風のデコレーションは元日にいたるまでそのまま飾ってあるようです。
 店内は、日本のトランス系のお店よりかなり広く、3〜4倍ぐらいはありそうな気がしました。踊るスペースもしつらえてあって、そこで、派手なセクシーな衣装で踊っている人もいました。踊ったり、男性に甘えるような会話をしていたり、当事者どうしで語りあっていたり・・・それこそ三者三様でしたが、日本のトランス系のお店では、派手なセクシーな下着で踊るような場面はほとんどありませんから、アメリカの当事者は、なかなかアクティブな楽しみ方をしているのかなと思ったものでした。

 なかなかうまく踊っていました。
 この方もそうですが、このお店にいた当事者のほとんどが胸をふくらませる整形をしていました。この方については性器も手術していたのではないかと思います。
 体を女性に変えたトランスセクシュアルの方は集ってきていますが、「男ときどき女」のライフスタイルをしているトランスヴェスタイト的なタイプの方はどうしているのか。その点は、今回はわかりませんでした。

 いやあ、身長がかなり高いですねえ。
 だからともいえるのかもしれませんが、欧米に行くと、私は、全く身長が低くなり、欧米の白人の女性よりも、さらに低いぐらいになってしまいます。それに、肌のきめの細かさはアジア人の特性でもあり、日本にいるときよりも、女性としてパスしやすくなるともいえます。


 世界中、どんな人種であっても、必ず、自分の性に違和感を抱き、「性を変えて生きていきたい」と願っている人たちがいるはずです。「性を変える」といっても、その人がおかれている環境、その人が選択するライフスタイルなどで、肉体も変えて生きていこうとするのか、それとも「男ときどき女」のスタイルで違和感を解消しようとするのか、それは多種多様だと思います。多種多様な「性の違和感を持つ人たち」が、その内部で「私の方が正統、あの人たちは趣味だ」などと、お互いに対立しあい排除しあう関係は、たいへんに不幸なことです。
 世界のいくつかの国の当事者がおかれた様子をみてきて、まさにさまざまなスタイルがあることを知りました。一方、日本では、当事者がラスベガスのお店でのようにセクシーな姿で楽しむ人に対して「あいつは性同一性障害なんかじゃない.性的な趣味だ」などと罵倒する雰囲気すらあります。悩み苦しみ、自分の生活を「くらーーく」送ることが〈性同一性障害〉としてまっとうだというわけです。快楽をさぐり人生を楽しくしようとしているトランスセクシュアルの人たちが、アメリカではこの写真のように現実にいるわけです。
 悩むだけではなく、自分のおかれた環境で、いかにして性別違和感の苦悩を軽減し人生を楽しく生きるか・・・そんな人たちをみた気がしました。