秋田の小京都角館(かくのだて)を歩いて(1)
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2001年3月28日夜に、新宿西口から出ている、秋田ゆきの深夜バスに乗り込んだ。新宿の小田急ハルク前を夜10時10分に出発し、秋田市には、翌朝6時半に到着する。新幹線「こまち」で行く旅程よりは長いが、深夜バスの座席はフラットに近いほどにリクライニングできるし、湯茶、毛布、スリッパ、ステレオ番組など、サービスはかなりいい。私としては、生まれて初めての深夜バス体験だった。
深夜バスに慣れているだとか、かなり疲れているだとかであれば眠れるのだろうが、高速道を走るためかゴーゴーという走る音がけっこう耳につく。目をつぶって足を伸ばして寝ていられるので、体は疲れないが熟睡はできない。どうしても睡眠不足の感じが残っての秋田到着だった。留美子の旅も、今年で3年目になる。これまで、私自身は、旅はほとんどしてこなかった。嫌いというよりは「お金がもったいない」といった気持ちのようであったが、もっと、深層心理を探ると、男性として旅してもつまらないという気持ちがあったのかもしれなかった。
しかし最近は、ちょっと事情がちがってきた。留美子として旅に出るようになったからだ。
留美子として旅に出ると、しかも「ひとり旅」だと、男モードのときには見えてこなかったことも見えてくるような気がして、ちょっと新鮮な気持ちになる。
女性でいると、殿方が親切にしてくれるというような実利的なことを言っているのではない。目に飛び込んでくる風景の色がちがうのだ、といっても、何がどう違うのかを説明するのは難しい。ただ、男性モードでいるときに見た景色とは、何かしら見え方がちがうとしか言いようがない。「見る」という刺激を受容する側の心の持ち方の問題なのかもしれない。秋田からは、各駅停車の列車だと、奥羽本線の横手方面に乗り、途中、大曲で乗り換えて、田沢湖線を盛岡方面へと上る。おおむね1時間程度。ただし、列車の本数は少なく、大曲での接続もあまりよくない。一方、秋田新幹線「こまち」を使えば、30分はかからないで着く。しゃにむに新幹線に乗せて特急料金を稼ごうという、JR側の魂胆なのかもしれない。結局、角館への行きは「こまち」で、秋田への帰りは各駅停車でということになった。
まずは、駅前。観光客風の初老の男の人に、「シャッター押してもらえますか」と、今回の旅行の最初の1枚を撮ってもらった。
しばらく歩くと、武家屋敷街が見えだした。古い板壁の住居がずっと続いている。外観が古いとはいえ、ちゃんと人が住んでいて普通の住居として使われているところがほとんどだ。しかし、そのうちいくつかの住居は、観光客向けに開放されている。
そのひとつ、角館の武士としては上級に位置していたとかいう青柳家の門をくぐった。季節的には春本番とはいえ、雪国の残雪はまだまだ多くが積まれていた。
薄暗い家の中をのぞくと、土間のようなつくりの間があり、そこを通って、なかに入ることができるようになっている。たまたま、この家を管理している年配の男性がいて、セルフタイマーで写真を撮ろうとしていると、その方がシャッターを押してくれた。
そして、部屋の中に招き入れてくれた。
3月末の角館は、観光シーズンには入っていない。4月末ともなれば、桜で有名な角館を訪れる人も多いと聞いているが、このときはまだ少なく、家の中にいたのは、私ひとりだった。
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