留美子のひとり鉄道旅(27)

 短いローカル、
    氷見線・万葉線の旅
  


 富山県は、北陸の東よりの県。江戸時代は福井の越前、新潟の越後にはさまれて、真ん中に位置したということで越中と言われていたようです。「越中富山の薬売り」で名を馳せ、全国を行商して薬を売って回るという特産品を生み出した地域でもあったようです。
 中心都市は富山市ですが、第2の都市が高岡市。この高岡市を起点として短いローカル線が出ています。氷見線。
 特急や快速は通りません。全部の列車が各駅停車。もちろんディーゼルカー。
 塗色こそ、赤とクリーム色の国鉄色とは変えていますが、まぎれもなく国鉄時代からのディーゼルカーが走っています。

 氷見線の景勝地というと、雨晴海岸でしょうか。最寄り駅は「雨晴」。ホントに寂れた小さな駅です。でも、氷見線のほとんどの駅が無人駅なのに対して、この駅には1人だけ駅員さんがいました。
 ひとりだけの駅員さん。すべての業務をひとりでこなさなければならないわけですから、たいへんといえばたいへんですが、煩わしい人間関係に気をとられることなく、毎日毎日1人で仕事をするのも、なかなかいいなと思いました。もっとも、1日を1人でいるのはつらいという人は苦痛でしょうけれど。私は、毎日、ひとりで仕事ができればハッピーだなあと思ってしまいます。
 学校でも、大勢の教員が机を並べている職員室にいるのは苦痛で、それよりは1人だったり2人3人ぐらいの教材研究室にいる方が好き。忘年会とか学年の飲み会なんか嫌で嫌でたまらないのですが、そこに出るのも仕事のうちかなと割り切らざるをえないときもあります。

 飲み会に自前でお金を出して、なのに「仕事」だと思わざるをえないなんて、まったく馬鹿馬鹿しいことですが、これも「日本的」な人間関係なのでしょうか。
 勤務時間中は仕事と割り切って、時間が終われば、あとは、自分の時間を楽しむなんていうヨーロッパ的な人生の送り方ってなかなかできないのでしょうかねえ。
 かといって、飲み会が嫌いなわけではなく、同僚とではなく、「留美子」として語りあえることができる場での飲み会はとても楽しいものです。酒の場は、仕事をずっと引きずるような「同僚」ではなく、全然ちがった職種の人たちと語りあうのが楽しいですね。
 雨晴海岸は、晴れていれば、立山連峰が壁のようにそびえ立っているのが見えるとのことですが、この日はあいにく曇り空。雲のあの向こうに立山連峰があるのだなあとの想像で我慢しておきます。

 雨晴海岸から高岡に向かう途中にある「伏木」という駅。ここで降りて3分ほども歩くと、渡し船乗り場に出ます。この時代、渡し船とはめずらしい。生活線としての渡し船でもあるようで、学校帰りの女子高生が自転車と一緒に乗っていました。
 渡し船で渡ったところに、万葉線といって、高岡駅から越の潟までを走る電車の路線があります。この線はもともとは加越能鉄道という鉄道線だったようですが、地方ローカル線の衰退のなかで廃線の憂き目にあうところだったのです。ところが、沿線住民の通勤・通学に重要な路線だということもあって、第3セクターに移管し、そして普通の鉄道形式ではなく、路面電車を走らせ、途中までは道路との併用軌道、残りは専用軌道という形態で再出発したのです。環境問題で路面電車が見直されることもプラスに働いたのかもしれません。
 左の写真のような、ヨーロピアンスタイルの真っ赤な超低床車「アイトラム」を導入したこともあって、ちょっとした人気路線ともなっているようです。氷見線が1時間に1本程度あるかどうかというタイムテーブルなのに比べて、こちらの方は15分おきぐらいに走っています。電車は、ある程度頻度があることで、その有用性がでてくるのだと思います。

 万葉線の駅は、ホームといっても、普通の鉄道のホームとはちがって、路面電車スタイルの低い段差のホーム。
 また、ほとんどの区間は単線。駅部分ですれ違えるようになっていますが、ここ、海王丸公園の最寄り駅「かいおうまる」では、すれ違い部分もなく、したがって、電車はホームの右方向から来たり左方向から来たりすることになります。
 海王丸公園は市民の憩いの場。でも、地方の公演は、東京の公園とちがって、休日でも人はあまりいません。夕方ともなるともうまばら。人が少ないところで自然を楽しめるというのは、やはり地方ならではの特権かもしれません。もっとも、そのことは、地方と都会との格差にもつながっていく深刻な問題でもあるわけですが。

【この記事の部分は、後日追加】
 万葉線ってユニークな路線だし、そこを走っているアイトラムって、なんとなくかわいくて素敵だなあと思っていたのですが、同じように考える人たちもいるのだなあと感じさせられたのが、『
旅と鉄道』という鉄道ジャーナル社が発行している雑誌の2007年11月号を見たときでした。
 パラパラとめくっていると、ついこの間みた電車の写真が載っているではありませんか。庄川にかかる鉄橋を走るアイトラムの写真は、ちょっと「絵」になるらしく、私は他の本で見たこともありましたが、この雑誌にも素敵な写真として掲載されていたのです。私自身は、遠くからアイトラムを撮影する機会がありませんでしたので、しばし見とれてしまいました。
 私の出身地である熊本市の市電にも、超低床車のトラムが走っていますが、万葉線のアイトラムほどにかわいくはありません。そして「赤」がこの路線に似合っています。数ある鉄道のなかでも、私がおすすめしたい路線のひとつです。

←鉄道ジャーナル社『旅と鉄道』2007年11月号、p39 から