留美子のひとり鉄道旅(24)
 (スペイン鉄道紀行 2)
 
ロマンチックな列車名称
  アンダルシアエクスプレス
  

※BGMは、グラナダにあるアルハンブラ宮殿にちなんだ「アルハンブラの想い出」です


スペイン鉄道紀行
 スペインの国鉄は「Renfe(レンフェ)」と呼ばれていて、スペイン国内に鉄道網を張り巡らせている。イギリスやフランスと並ぶ鉄道大国だともいえるが、鉄道にかけては勝るとも劣らない日本に住んでいると、とりたてて、スペインは鉄道が発達しているというほどの感想にはならない。それは、日本という世界でもトップクラスの鉄道大国にいるからであって、公平にながめてみると、世界の中で、スペインが鉄道大国であることはまちがいない。
 このスペインの鉄道に乗車すると、日本ではなかなか体験できない「鉄道の旅」を楽しむことができる。今回、私が体験したスペイン鉄道の「楽しさ」を、ここで紹介してみたい。


ロマンチックな列車名称、アンダルシアエクスプレス

 アンダルシアエクスプレス・・・なんだかとてもロマンチックな列車名だ。エクスプレスなどと名前がついていると特急列車かなと想像してしまうが、その実は、中距離の各駅停車に毛が生えたぐらいの快速列車だった。指定席であるわけでもなく、プレミアムの展望座席があるわけでもない。電気機関車でもなく電車でもない。ディーゼル車両なのだが、アンダルシアエクスプレスなどというすてきな名称がつけられている。
 座席は、日本の特急列車の普通車座席ぐらいの質ではあるが、車両そのものはたいした変哲もないディーゼルカーである。でも、約4時間ほどをかけて走る、その車窓がすばらしい。渓谷美が広がるところがあれば、延々と続くオリーブ畑があり、やや高いところに線路が敷かれているせいもあって、窓いっぱいに広がる風景美があったりと、乗っている4時間の車窓は、乗客の目を飽きさせない。

 スペイン南部アンダルシア地方にある港町・アルヘシラスと、アンダルシアの古都・グラナダとを4時間あまりでむすんでいるのがアンダルシアエクスプレス。私は、アルヘシラスの側からグラナダへと向かう列車に乗った。
 ちなみに、グラナダは、スペインで500年間にわたって支配したイスラム王国の最後の拠点であったところでもあり、アラブ、イスラム様式の建物も残っているところ。キリスト教側による領土回復運動(レコンキスタと呼ぶ)によって、グラナダからイスラム勢力が追放されキリスト教側の支配下になったのが1492年。この年はまた、スペインがパトロンになって、コロンブスが新大陸を発見した年でもある。スペイン領内からはイスラム勢力を放逐し、海外では新大陸支配に乗り出し、スペインが世界帝国となっていくそのきっかけともなる年が1492年だったのだ。
 アルヘシラスは、この都市じたいは、とりたてて見どころがあるわけではないのだが、地中海から大西洋に出る要所、ジブラルタル海峡にある都市で、ここから、対面のアフリカのモロッコの港町・タンジェに頻繁にフェリーがでているところである。北アフリカのアラブ世界とヨーロッパとの接点となる港町でもあり、街ではそこここでアラブ人の姿をみることができる。
 アルヘシラスから出発してグラナダまでの4時間あまりを走るのがアンダルシアエクスプレスなのである。1日に3本、運行されている。
 アフリカとの活気ある玄関口から、レコンキスタの象徴とでもいうべき古都・グラナダへの路線は、アンダルシア地方を東西につなげる鉄道路線であるのだが、マドリッドとかバルセロナといった大都市とむすんでいるわけではないので、多くの乗客が乗るメイン路線ではない。ローカル線の風情を漂わせている路線といった方がふさわしい。
 非電化のローカル線ということもあって、座席は自由席。日本の昔の新幹線の座席のように転換型クロスシートが配されていて、進行方向に向かって座るには、そのシートの背を倒せばいいという座席。したがって、リクライニングなどはついていない。でも、座り心地は悪くない。
 アルヘシラスからの乗客は、座席定員のだいたい5割ぐらいだろうか。途中の駅から乗り込んでくる乗客もいるが、また下車する人たちもいるわけで、私が乗ったアンダルシアエクスプレスはだいたい5割程度の乗車率だった。エクスプレスといいながら、ロンダまでの1時間半は各駅に停まっていく。いずれの駅もかわいらしい駅で、人はほとんどいない。アンダルシアのちいさな村々の駅といったところだろうか。
 車窓から見える家にはプールがしつらえられているところもあって、村とはいえ瀟洒な建物が建っている。小さな村とはいえ、決してひなびた寒村というわけではなさそうだ。一昔まえの日本の寂れた山村のイメージとはまったくちがう。白壁が建ちならぶ村もあったりと、アンダルシア情緒を楽しませてくれる景色が広がり、アジアからの乗客である私の目を楽しませてくれたのだった。
 

←かわいらしい小さな駅舎の駅が点々としている.ホームにテーブルが出されていて食事ができるようになっている駅もあった.

←地平線のかなたまで延々と広がるオリーブ畑.スペインはまさにオリーブの一大産地であることを実感する.