留美子のひとり鉄道旅(10)
  そっくりさん
       2つの高速鉄道


 1枚目の写真の列車と2枚目の写真の列車、2枚目の方がやや丸みをおびているものの、かなり似ている。でも撮した場所は全然違うところ。それぞれの駅は1万qぐらい離れているのではないだろうか。
 1枚目の駅は、パリ・モンパルナス駅。列車は、フランス国鉄が誇るTGVという高速鉄道。パリを中心にして、フランス国内のあちらこちらに路線が延びている。最高時速は300q/hというから、日本の新幹線の中心モデル700系のぞみよりもやや速い。700系の公称最高時速は285q/h。500系のぞみが、山陽新幹線区間で300q/hを出すというから、これと同じ速さということになり、日本の新幹線と並んで世界トップレベルの高速鉄道ということになる。
 さて2枚目の列車は、韓国の釜山とソウルを結ぶKTXという鉄道。写真はソウル駅で撮したものだ。最高速度が300q/hというのもTGVと同じ。

 似ているのはもっともなのだ。フランスのTGVの技術とノウハウを導入してつくられた高速鉄道なのだから。
 日本の新幹線技術も売り込みをかけたのだろうが、フランスにもっていかれたしまった。フランスのTGVも韓国KTXも、高速鉄道としてみたときには、私は日本の新幹線の方が優れていると思っている。発車時刻の間隔が、ひとつの方向では、フランスだと1時間おきぐらいで、韓国でも30分に1本。日本の新幹線のように10分間隔ぐらいで頻繁に出ているのではない。
 TGV・KTXとも、機関車が牽引する方式をとっており、新幹線のような電車方式ではない。駆動のモーターが各車両についておらず先頭の機関車で引っ張っていくため、静粛性はある(とはいっても、700系のぞみとほとんどかわりはないが)。しかし加速という俊敏性には欠けるようだ。機関車牽引方式の宿命なのかもしれない。したがって、停車駅を多くすると所要時間がぐーんと増えるということになる。加速力は新幹線に軍配があがる。なのに、韓国は、日本の新幹線を採用せずにTGVを採用してしまった。

 私はこの背景として、政治的な要素が絡んでいるのではないかと思っている。
 隣国どうしでありながら、お互いの国が信頼関係をもってつきあっているという状況にはなっていない。領土問題で双方に譲れない部分があることはわかる。しかし、靖国神社への参拝問題で近隣諸国とこじれるのは、同じ東アジアの国どうしとして、やはりまずいと思う。韓国や中国の人たちの反対だけではなく、日本国内でもかなり問題だとの声がある参拝に、日本の総理が自説に固執するかたちで頑固に行くということは、そのために、大事な経済関係で大きなマイナスを生むとしたら、それは日本の国民のためにはならない。
 近隣とのおつきあいには、相手があることなのだ。自説が正しいと固執することで国家間の関係をだいなしにするとしたら、これほどデメリットはない。
 韓国というお隣の国なのに、フランスの技術にとられてしまったというのは、なんとも残念な気がする。
 もちろん、フランスのTGVの技術はとてもすばらしいだろうと思っている。TGVのテクノロジーをベースにして、ロンドンとパリを結ぶユーロスターがつくられたし、パリとブリュッセル間を結ぶタリスもTGVがベースだ。
 実際に乗ってみても、静粛性と安定性、たしかにTGVはすばらしい。でも、日本の新幹線は、それに負けず劣らずすばらしい技術だと思う。