留美子のひとり鉄道旅(8)
  JR東日本1日間乗り放題
 秋田内陸縦貫鉄道乗車と
     角館散策


 秋田新幹線(田沢湖線とも共通の線路を走る)の角館駅から、奥羽本線の鷹巣駅とを結んで秋田内陸縦貫鉄道が走っている。女性の鉄道紀行作家・矢野直美さんが書かれた『おんな一人の鉄道旅』のなかで、この路線の紹介があって、いかにもローカル線そのまんまというところが気になっていた。いつか乗ってやろうと思っていた矢先...
 なんと、JR東日本が、大人の休日倶楽部ミドルの会員を対象として、JR東日本全線1日乗り放題というきっぷを発売することになった。もちろん新幹線を含めて特急にも乗れる。なんとその金額は6千円。これまでにも、正月1日のパスで1万2千円というのがあったが、今回はその半額だ。これを利用しない手はない。
 ということで、5月半ばの土曜日にさっそく行ってきた。

↑ 秋田内陸縦貫鉄道の各駅停車のディーゼルカー車内.1車両に数人しか乗っていません.典型的なローカル鉄道.この鉄道はJRのパスでは乗れません.

 東北新幹線から秋田新幹線直通のこまち号は、2週間前にみどりの窓口に行ったのだが、朝一番のこまち1号で東京から角館(カクノダテ)までの指定席は売り切れだった。お昼の列車までは満席状態。
 こういうときにはあわてずに、東京→盛岡で「やまびこ号」をリクエストしてみるとよい。そして、盛岡乗り換えで、途中からこまち1号に乗るような計画にしてみるとよい。残席は多くはなかったが(窓際席の確保は無理だった)なんとかとれた。
 朝6時ごろのやまびこ号で終点の盛岡まで行き、10分ほどしてやってくるこまち1号に乗り換える。約1時間、新幹線は角館駅に到着する。
 角館は小京都とも呼ばれていて、昔の武家屋敷がそのまま残っていて、そのなかのいくつかの屋敷は見学できるようになっている。道が舗装されていなければ、屋敷の木の塀がつづくこのエリアは、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような錯覚を起こさせる。

↑ 江戸時代にタイムスリップしたような気になる角館の武家屋敷通り.舗装されてなければまるで江戸時代

 角館から奥羽本線の鷹巣までの路線が、第3セクターが経営する秋田内陸縦貫鉄道だ。過疎地域を走る沿線住民のための生活路線なのだが、下りだと1日に1本、急行もりよし号が走っていて、これは観光用の列車をねらっているのだと思う。2両編成のもりよし号は車両の真ん中がロビーエリアとなっていて、団体客などはここで盛り上がるのだと思う。
 そんなことを思っていたら、ドヤドヤと中年オバサン(ゴメンナサイ)の一団が乗り込んできた。静かな車内は急に明るく騒々しく?なった。乗客が少ないローカル線で観光客をもっぱらとする列車だと声をかけやすい。関西の女子校出身で、現在は東北地方に在住している人たちの同窓会だという。女性の一団のなかに入って、なぜか私もホッとした感覚になった。

↑ 急行もりよし号の車内.真ん中あたりにしつらえてあるロビーエリアで撮影.ディーゼルカーだが、車内はなかなかきれいだ.


 秋田内陸縦貫鉄道の料金は、これは残念だがJRではないため、今回のフリーパスは使えない。ただ、土日にはこの路線のフリーきっぷを2千円で売り出している。角館から鷹巣までの片道だけだと、フリーきっぷの方が60円高くなるので、途中下車したり折り返したりと有効に使えばモトがとれる。
 私は、もりよし号で終点の鷹巣まで行き、折り返しのもりよし号で、途中駅の阿仁合までさらに乗った。そのあと、こんどは各駅停車のディーゼルカーで再び鷹巣まで乗る。
 急行や特急のような優等列車で快適に旅するのも、それはそれでいいのだが、その場所の生活路線である各駅停車に乗ってはじめて、「その路線を乗ったのだあ」となるのではないだろうか。特急が頻繁に通る幹線は、あえて各駅停車に乗らないでもいいとしても、ローカル線は1回は生活列車に乗ってみたい。
 この鉄道の各駅停車は、オレンジ色のなかなか目立つ車両だった。1両だけのワンマンカー。乗客は数人だけ。たぶん大赤字なんだろうなあ。税金で補填されているのかもしれないが、それでも、こういう生活列車はやはり存続していってほしい。過疎だからって切り捨てる政治はよくない。

↑ 津秋田内陸縦貫鉄道の各駅停車のワンマンのディーゼルカー.阿仁合駅にて


 鷹巣からは、かもしか号という青森と秋田を結ぶ特急に乗って秋田駅まで行く。かもしか号は、民営化されてJRになる前の国鉄時代に大量につくられた特急車両の塗装色を変えた車両を使っている。日光号のように昔の特急車両を使いつつも全面リニューアルされて新型車両のように見えるものではなく、そのまんまの車両といったところだ。最近では、特急だけではなく、ムーンライトえちごやムーンライトながらの臨時列車版などの快速にも使われていて、特急車両としてはもはやかなりの旧型ということになる。
 かもしか号に乗るころには陽も傾きかけていて、晩春の陽射しが柔らかくつつみこむ。昼間は7分袖でも汗ばむぐらいだったのが、このころには少し肌寒くなってきた。
 秋田駅に着くと、約50分程度の待ちあわせで、東京行きの最終のこまち号に接続している。出発は19時ちょっとすぎ。日差しが長くなったとはいえもう薄暗くなっている。夜汽車の旅だ。東京までは4時間ほどの鉄道旅になるので、心地よい眠りにつけるようにカクテル缶とナッツ類のおつまみを買う。今日の1日旅行の最後の旅だ。ひとり旅を車内で楽しく過ごしたい。
 23時すぎに、秋田からの最終の新幹線が東京駅につく。今日の私は、まだこれからが楽しみが待っている。
 この日に封切りされる映画『ダ・ビンチコード』のオールナイトに行こうと思っているからだ。ダ・ビンチコードの映画は前評判が盛り上がっているようなので、日中はたぶん大混雑だろうと思った。ならばオールナイト。ちょっとばかり眠いけれど、オールナイトはシートのかかった通常だと指定席でも、全席が自由に座れる。料金も1200円と安い。そんなに混まないため、もっとも見やすい位置でみることができる。・・・なんと濃い1日だったのだろう。
 JR東日本1日パスが6千円。秋田内陸縦貫鉄道フリーパスが2千円。オールナイトの映画が1200円。食べたり飲んだりした分を含めても1万円程度。これでこれだけ楽しめればいうことはない。経済的に、しかしカリカリした旅にもならずに賢く楽しめるコツは、とにかく情報を集めて、かぎられた期日をうまく活用することにつきると思う。