留美子のひとり鉄道旅(2)
  青春18きっぷの旅
東京から福岡、
  そして韓国・ソウルへの旅


 青春18きっぷ。18歳までしか使えないと思っている人もいるようだ。そんなことはない。むしろ、利用者の半分は年配の方であるといってもよいぐらいに、このきっぷで旅を楽しむ人が増えている。このきっぷでは特急や急行には乗れないので、ゆっくりと「鈍行の旅」を楽しもうというユトリズムの楽しみ方かもしれない。
 鈍行の旅はそれなりに風情があり楽しいのだが、やはり疲れることは否めない。ティーンエイジャーのようにエネルギーが満ちあふれている世代ではないので、そこは賢く旅する必要がある。
 よくしたもので、特急用の車両が快速として(鈍行扱いになるので特急券は必要ない)運用されている列車があり、それをうまく利用すると、けっこう快適に旅することが可能になる。日本国内では新幹線や特急を一切使わず、韓国国内では新幹線にあたる高速列車に乗って格安にソウルに行くことができたので、その旅を紹介したい。
 西の方面へ長距離を移動するとき、東京から岐阜の大垣までは、夜行の快速(鈍行扱い)である〈ムーンライトながら〉を使うのがコツだといえる。上の左側の写真がその〈ムーンライトながら〉の車内である。十分にリクライニングができ、足回りもまあまあのスペースがある。JR東海で新型特急として運用されている車両を使っているので乗り心地は申し分ない。深夜に走り、また快速であるため、停車駅は特急なみである。ハタと思った。特急とは早くて停車駅が少ない列車をいうのではなく、鉄道会社が「これが特急だ」と決めたものが特急だということ。特急と同じスピードであったとしても、それを「快速」と決めれば快速になるわけで、〈ムーンライトながら〉はまさにその列車だといえるだろう。ちなみに、上りの〈ムーンライトながら〉の折り返しで東京発静岡行きの普通列車が1日に1本ある(東京を朝の5時19分に出る列車)。写真の車両を使っているのだけど、指定券も特急券も必要ない。扱いは全くの普通列車なのである。
 大垣からは数分の乗り換え時間で、京都・大阪・神戸に向かう普通列車がある(上の右側の写真)。〈ムーンライトながら〉で大垣まで乗っている乗客の多くが、この列車に乗り換えるようで、大垣到着の午前7時ちょっと前には、席取りのバトルが展開される。
 ちなみに、〈ムーンライトながら〉はJR東海の車両で、乗り換える普通列車はJR西日本の車両だ。ちなみにこの車両は、JR西日本の近郊電車で、ややもすると特急を上回るスピードで疾駆する新快速に使用されている車両でもある。

 新快速に使われている車両とはいえ、特急用の車両ではなく、あくまでも近郊用の電車であるため、座席の足回りは快適だとはいえない。昼間に、大垣から九州方面へ移動するには、こういった通勤にも使われている電車を利用する以外にない。
 もし、快適に移動したいのであれば、新大阪から博多まで運行している〈ムーンライト九州〉を使う手があるが、この列車は季節の臨時列車であることと、夜行の快速列車(機関車が牽引する客車形式の列車)であるため、大垣に到着した午前7時から夜まで、新大阪までのどこかを散策して時間をつぶすことになる。青春18きっぷの旅は急いではならない旅なのだ。
 私は、明後日に博多港から韓国に発つ予約をしていたため、どうしても、その日のうちに、下関までは行っておきたかった。したがって、昼間の普通電車を乗り継ぐことになる。
 ここで、ポイントとなる電車は、岡山から下関までを直通で走るJR西日本のシティライナーという電車。普通列車というのは走行距離が短いものが多いが、これはけっこう長い。7時間の旅となる。
 新幹線のようにスピーディに移動ということとは対局にあるのだが、山陽新幹線が「もぐら新幹線」と揶揄されているように、トンネル、またトンネルの連続とはちがって、車窓から瀬戸内海をながめながら行くことができる区間がそれなりにある(上の写真の右側)。こういう景色を楽しむ心をもった余裕のある旅は、現在では、それじたいがぜいたくなことなのかもしれない。
 瀬戸内海の景色をながめながら旅するのであれば、やはり「酒」だ。しかし、日本酒のカップ酒にスルメでは、なんともオジサンくさい。ううーん、私は「女性」なのだ(^^;)。岡山駅で、ミックスナッツと梅ワインの小瓶を買っておいた。ワインにナッツであれば、オジサンのカップ酒とはちがって、少しはお洒落なのかな。 

 博多港から韓国に向けて旅立つまでに1日余裕があった。
 下関で下車し、ここで泊をとることにした。翌日は、下関と門司を散策したあと福岡へ向かうことにした。
 翌日は快晴で、しかも春めいた暖かい日だった。1着だけ持って行ったミニスカートできめて、レンタサイクルで下関と門司をまわるという算段だ。
 パンツスタイルは動きやすいけれど、ミニスカートで脚を出すスタイルだと軽快感があって、これも捨てがたい。こんな歳になっても私は好き。歳にとらわれなくミニスカートで颯爽と歩きたいものですね。
 下関から門司まで、自転車だと人道トンネルを通っていくことができる。トンネルへは、エレベーターを使って降りるようになっている。自転車もOKだ。トンネル部分は700メートルほどなので、自転車だと数分の距離だ。

 上の写真は、門司のノーフォーク公園から、関門海峡にかかる大橋を撮ったものだ。関門大橋は高速道路の橋で、一般道は関門トンネルでつながっている。関門海峡には、JRの普通の鉄道トンネル、新幹線のトンネル、一般国道トンネル、人道トンネル、そして、高速道路用の関門大橋と、5つの通路で接続されている。
 写真を見ればおわかりのように、本州の下関側はすぐそこに見えている。海峡というよりは、大きな川といった感じすらあるぐらいに、狭い海峡といえる。広い海原が眼前に横たわる北海道と本州の間の津軽海峡とはまったくちがう。

 JR各社のなかで、唯一、国際航路を持っている会社は?
 正解はJR九州である。ジェットフォイルの高速船ビートル号が、博多港と韓国の釜山港を約3時間で結んでいる。水は空気よりはるかに浮力が大きいので、水の中に小さな翼をもった突起をつくっておけば、高速で走ることによって水面から浮き上がって走ることができるということらしい。原理は航空機と同じ。ただし、翼はうんと小さくてもよいということのようだ。浮力も大きい反面、水は空気とちがって、抵抗力も大きいため、スピードは80q/時程度だという。乗り心地はけっこう安定していて、普通の船のように揺れない。浮いて走るため、波の影響を受けにくいとのことだ。いいことづくめのようだが、船のように大きくはできないようで、ちょっとみると、横に並んでいる船と比べてかなり小さく見える。こんなので大丈夫かなと思わせるぐらいだ。しかし走り出すと(浮いて走る状態を翼走いうらしい)安定した走りをする。上の左側の写真が、そのビートル号の船内だ。

 船というよりは航空機の座席に似ている。航空機のように食事や飲み物が供されることはないが、売店があって、ビールなどを免税で売っている。缶のキリンビールが1本100円だった。
 博多と釜山の料金は片道が13000円なのだが、往復と5日間の韓国国鉄が乗り放題というチケットつきの「コリアレール&ビートルパス」というものを、2万5000円で、JR九州管内のジョイロードという旅行社で売っている(ジョイロードというのは、JR東日本でいうと〈びゅう〉みたいなもの)。前もって、東京から、電話でビートルの予約をとっておいて、予約番号などをメモしておく。それを当地のジョイロードに行って、「コリアレール&ビートルパス」を購入するという手順になる。
 昨日(2006.4.10)、鹿児島と屋久島を結ぶジェットフォイル船にくじらだと思われる生物がぶつかり乗客の大勢がけがを負ったというニュースが、新聞やテレビで流れていた。実は、私が乗ったビートルも、その10日ほど前にくじらとぶつかったという報道がなされていた。このときには大きな負傷者はなかったようだった。そういうこともあって、くじらが遊泳している対馬沖では、スピードを遅くして運行していたことと、シートベルトの着用の指示がかなりあった。事故があったからといって飛行機みたいに即死ということにはならないと思うが、くじらの問題は、高速船のあらたな障害物なのかもしれない。(2006.4.11に赤字部分を追加して記す)
 このパスは、韓国内の特急が、新幹線に当たるKTXという高速鉄道を含めて乗ることができる。ビートルのチケット代を除いて考えると、青春18きっぷ並み、いや、特急に乗れることを考えれば、それ以上にお得だともいえる。
 上の2枚並んでいる写真の右側がKTXの車内。その下(上の写真は)、KTXの先頭部(または最後尾)で、先頭と最後尾が強力な機関車になっていて、機関車で昼間部の客車を牽引するという方式になっている。フランスの新幹線であるTGVの方式なのだが、さもありなん。KTXは、TGVを用いた高速列車なのである。日本の新幹線方式がTGVと競って敗れたということらしい。ちなみに、ソウル・釜山間は、客車を20両つないで走っている。日本の新幹線なみに頻繁に出発している。そうそう、珍しいなと思ったのは、車輪(というか台車)が2つの車両にまたがって、連結部分のところについているということ。私は、このタイプを、日本では見たことがない。高速走行や安定性にかかわる技術なのだと思うのだが、鉄道のテクニカル方面はさっぱり知らない私としては、ただただ「へーーっ」と珍しげに見ていたのだった。

 KTXの開業にあわせてソウル駅が新しくなったと、ガイドブックに書かれていた。
 とにかく、新しくて大きくてきれいだった。
 落書きがあって、薄暗くて、ちょっと物騒な気すらするイタリア・ローマの中央駅であるテルミニ駅に比べると、明るくて瀟洒で、そして、安全そうな雰囲気すら漂う。
 ローマが、ローマ帝国という過去には世界の覇者であり、美しく絢爛な都をつくったのだが、今は、東アジアが経済を牽引していくぐらいに伸びてきているという、その象徴的な建造物なのかもしれない。
 歴史ある古い建物がたくさん残っていて、それを大切にしながら国づくりをすすめているローマ。新しくこれから続々と建ちならんでいこうとする韓国を含めた東アジア。
 対照的な2つの国家のデザインを、そこにみることができたような気がする。

左の写真はソウル駅構内