2000年秋、出版した本の挿入写真撮影風景
出版の本は↓

「私はトランスジェンダー」
現在、好評発売中
(宮崎留美子 著 2000年11月下旬、<ねおらいふ社>から発売

 9月某日、晴れ、私の家の近くで、朝の8時50分に<ねおらいふ社>の方と待ち合わせ。その方の車で、多摩センターにある某ホテルに行く。すでに、スイートルームが予約してある。
 すでに、<ねおらいふ社>関係の人以外にも、人物を撮るのが専門というカメラマンと、編集者がいて、やや遅れて、表紙などのデザイン担当の方が見えられた。私を含めて6人の陣容だ。
 ツインルームあたりであれば、6人もいれば窮屈だったのかもしれないが、さすがにスイートルームだと、ソファのあるリビング、テーブルのある部屋、ベッドルームと、主となる部屋だけでも3室もあった。ホテルのスイートルームに入ったのは、今回が初めだ。
 <ねおらいふ社>の方針もあり、表紙には、私の写真を利用したデザインをデザイナーが作成することになっている。まずはその写真撮りからだ。今日の最もメインとなる場面である。
 デザイナーの提案によるポーズに、カメラマンによる意見を加えて、ソファに私自身が座り、実際のポーズを行っていく。それをカメラマンが見ながら、もう少し右の方に向いてとか、手を少し下にずらしてなど細かな指示がなされる。そのあとに、私の顔のあたりに露光計をもってきて光量の調整を行う。カメラでの撮影というと、私たち素人が写したときには、メイクした顔の部分が白浮きしてしまってお化けみたいになることがある。こうやって光量をしっかりと計っていれば、白浮きなどはないらしい。
 カメラマンの助手がわりをつとめてくれる<ねおらいふ社>の方が、反射板を持ったりして、さらに微妙に光量調整を行う。そうしたあと、まずは「ボラ撮り」というポラロイドタイプの写真をとり、写真うつりの構図を、編集者やデザイナーの方などに確認してもらい、そのあとが本番の撮影ということになる。ポラロイドとはいっても、そのカメラ装置だけで何十万円もするという道具で写す。その場でできあがるのだが、一般にイメージするポラロイドとはちがって、本格的な写真のように写っている。
 本番の撮影では、シャッターがひっきりなしに切られ、全く同じポーズで10枚から20枚、わずかに顔や体をずらしてさらに10数枚。この撮影だけで2時間ぐらいかかっただろうか。
 表紙の写真を撮ったあとは、私の他のいろいろなカットを、<ねおらいふ社>や編集者のねらいにあわせて撮るという。
 まずは、私が、パウダールームで鏡を見ながらメイク直しをしているシーンを撮る。大きなストロボ機材をルームに持ち込んでの撮影だ。メイク直しをしている私が鏡に写っているところと一緒に撮るという。これも、同じ姿勢で20枚近くのカットをとるので、鏡側に乗り出した姿勢のままなので、ちょっと疲れてしまった。
 このあとも、私がブーツを履いている場面やベッドに横たわってファッション雑誌を読んでいるシーンを撮ったりした。本番の撮影前のボラ写真を見ると、ブーツを履いている写真も、自分ながら、ちょっと色っぽく写っていてなんとなくすてきだなんて思ったりした。
 ある程度の数の場面を写したあと、皆さんで休憩。
 今度は、多摩センターの公園のところで、夕方の夕日に照らし出されている私を撮るというのだ。写真の色の出具合は、夕日のときがベストなんだという。外をとる場面では、夕日のときにベストの写真が撮れるようにタイミングを合わせるという。このあたり、素人ではなかなか思いつかないテクニックだ。さすがに、プロならではといえる。

 こうやって、1日かけた写真撮りは終わった。そのあとは、ホテルのレストランで「お疲れさん会」をかねて、今後の本の構成や営業のこと、その他、もろもろの話をすることになる。編集者の方からは、私が8月末に提出したラフ原稿の内容に注文がつく。ここをこのようにしてほしいとか、あの部分は重複しているからカットする、さらには、こういったところを表現してほしいなどの打ち合わせも行われた。
 せっかく出版する以上、私もある程度の数は売りたい。脱サラのベンチャーとして出発した<ねおらいふ社>は、私の本が、そこからの出版の第1号だという。最初であるだけに幸先よく売っていきたい。出版社にとっても販売部数はとても気になるところだろう。
 大のベストセラー「五体不満足」は何百万部と売れた。そこまでの大それた野望はないし、その何十分の1でよいのだが、ある程度の部数は売れて、小さなヒットぐらいにはなりたいなあなどと、素朴な欲望をもってしまう。せっかく出版する以上は、これは当然の欲望なのだろうと、私は思っている。

 私や出版社の方だけではなく、編集者・デザイナー・カメラマンも含めての満を持しての出版である。

 「私はトランスジェンダー」

 トランスジェンダーとしての思春期からの経験や、パートタイムのトランスジェンダーとして、男性/女性と、両方のモードで生活して実感として感じるジェンダー問題、一口にトランスジェンダーといってもその契機はさまざまであることなどなど、トランスジェンダーの方々はもとより、接客業に従事しているというニューハーフではなく、普通の仕事をしているこういった人たちの存在を初めて知ったという方々にも、十分に理解してもらえるように考えました。このため、用語の解説などをわかりやすく説明した「留美子先生の重要語講座」みたいなことももうける予定にしています。
 また、性別違和感を持った人たちのこと、トランスジェンダーと同性愛者との相違なども、この本を読むことで理解していただけると思っています。
 大それたことは言えませんが、ある程度は、たぶん期待してもらっていいかなと思っています。
 発行は、2000年、11月下旬発売。現在、好評発売中です。