世界で、日本で......留美子が出会った人たち (13)


(13)キャンディミルキィさんのこと 2009. 5. 4up


 女装を語るとき、この人をおいては話せないという、そういうビッグな方。それがキャンディミルキィさんです。
 以前、女装系の雑誌「ひまわり」の編集長をなさっていたりと、なかなかのアクティビストなのですが、トレードマークは、この「幼稚園児の衣装」。この衣装を着てバイクで街中を走るのですから、すれちがった人たちは「えっ、今のなんなの」と振り返ることはまちがいなし。
 キャンディミルキィさんは、たぶん、うしろめたい気持ちを持ちつつ、たとえば「女装会館」のエリザベスあたりで女装という異性装をやっていた時代と、GID(性同一性障害)という言葉が広がり性別変更の法律ができたりなど、人として生きる権利を主張しだした当事者が表に出ていった時代との、ちょうど過度期に現れた方でしょうか。
 今は、椿姫彩菜さんや、はるな愛さんなど、見た目も気持ちのよい人たちがテレビ画面を賑わしています。この人たちの前は、深刻に「GIDという病気」を語る当事者運動の担い手の人たちが、テレビの「真面目系の番組」でとりあげられたときがありました。さらにさかのぼれば、性を変えて表れる人たちは、バラエティ番組で笑いをとるニューハーフの人たちが全盛期を迎えたときもあって、キャンディミルキィさんは、ニューハーフといったプロではなくてアマチュア女装者としてバラエティ番組に登場した方なのです。
 その後は、バラエティで扱われるのではなく、もっと真面目な問題として「性を変える」ということをとりあげていくべきだ、という流れになっていくのですが、これがだいたい21世紀に入ったあたりのこと。真面目な問題として提起していくわけですから、テレビを見ている方もシリアスに見ることになります。NHKの教育テレビあたりで放送されることもでてきて、また、高校の資料集でも、当事者運動の当人が登場するようになりました。
 シリアスに見るということは、そんなに多くの人が、この手の番組を見ることにはなりません。教育テレビだと視聴率もかぎられてきます。移ろいゆく現代社会では、人々の関心事は別のことに変わっていき、GIDという言葉もちょっと色あせてきたというのが昨今の状態です。
 ところが、ここに、彗星のごとくテレビを賑わすようになったのが、椿姫彩菜さんや、はるな愛さん。とくに、椿姫彩菜さんは青山学院大の学生ということもあって、以前のニューハーフという分け方には収まりにくい。かといって、当事者運動の活動家ふうではまったくない。これまでのプロセスはいろいろあったようですが、今は、世間には、明るく前向きに生きているふうにイメージされるし、高校の進路指導部というカタイ部署で配布される「進路新聞」の第一面を大きく飾ったりするなど、20年前のニューハーフイメージとはかなりちがうわけです。でも、ゴールデンタイムのバラエティ番組に登場することもあって、こういった「性を変えて」生きている人たちへの認知度はすごく高まっています。もちろん、はるな愛さんの貢献度も大きいものがあります。こういった番組では、かたぐるしく「GID」なんて言葉はでてきません。そう、今は、GIDとか疾患とか法律がどうたらこうたらではなく、そういったフェーズから段階が一歩進んできたのかもしれません。
 図式的にいうならば、バラエティ番組から真面目系の番組へ、そしてまたバラエティ系の番組へ。しかし、椿姫彩菜さんたちは、ニューハーフ全盛期のころのバラエティ番組とはまたちがった出方をしています。ニューハーフ特集の番組として出ているのではなく、普通のバラエティの内容で、他のタレントさんたちと同じ立場で出ているという、新たな変化。
 いやあ、変わりましたねえ。多くの人たちが見ていることでしょう。
 キワモノ扱いから抜け出すとき、真面目系シリアス的なアプローチが一時は必要です。でも、それにとどまらず、気楽に楽しみながら見ることができるところで、キワモノではなく扱われだしたとき、大きな「歩」をすすめることができるのだと思っています。
 こういった変化の過度期に位置したキャンディさん。ひとつの変化の思いでとして残しておきたい方です。