街 角 と 風 景 [ 世 界 編 ] (20)
(20)ここは社会主義だった、東ドイツエリア 2006. 5. 5up
※右の写真はテレビ塔.旧東ドイツが国家の威信をかけてつくった建造物.今では、誰でも展望台に行けるドイツのベルリン市、テレビ塔の近くに公園がある。そこの公園のかなり目立つところに2つの大きな銅像がたっていた。写真で、私と比較すると、その巨大さがわかるだろう。座っている方が3m、立像の方は5mはあるだろうか。とにかく大きい。独裁国家でみられるような権力者の銅像なのだろうか。実はそうではない。この2人は政治権力などは全く持っていなかった。にもかかわらず、20世紀を動かした思想家であり、今も、その根底となる考え方が光を失ったというわけでもない。ただ、この2人の思想を正しく理解し運用できなかったところに、20世紀の不幸があった。
最近の若い人は、この2体の銅像をみても、それが誰だかわかる人の方が少ないかもしれないが、社会主義国といわれていた国家だけではなく、資本主義国家にも大きく影響を与えた2人。そう、あの、マルクスとエンゲルスの銅像なのだ。
ただ、墓場のなかで、マルクスとエンゲルスは、たぶん嘆いてはいるだろうけれど。2人は銅像を建てられたりするなどの個人崇拝をたいへんに嫌っていた。しかし、後世の「頭がとち狂った」共産主義者たちが、2人を偶像視していったところから社会主義はおかしくなり始めたのだった。2人の考え方は、あくまでも、科学の学説として、科学的な検討と批判のなかでこそ扱われるべきだったのに、「頭がとち狂った」共産主義者たちは、2人の言説を「聖書」に祭り上げてしまったのだった。後世の学者たちが、自分の言説の正しさを表すのに、マルクス=エンゲルス全集から引用することを習性としてしまったのだった。マルクス=エンゲルス全集の言葉が「聖書の言葉」になってしまったのだ。もはやこれでは科学ではない。科学の学問に権威をつくってはならないし、つくった段階で、その言説は堕落してしまう。
1989年、ベルリンの壁の崩壊。1990年、社会主義国だった東ドイツは消滅し、当時の西ドイツに吸収され、現在は統一ドイツとしてドイツ連邦共和国の一エリアとなっている。この公園は、昔の東ベルリンのエリアにあったところで、世界から東ドイツが消滅した現在、この地域が社会主義国であったことを指し示す記念物ともなっている。
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マルクスやエンゲルス、そしてレーニンを語りながら、彼らを神格化しゆがめてしまう傾向は、今でも存在する。スターリンを批判し反スターリン主義といいながら、自分たちが同じことをやっていることには盲目な人たちがいる。
卒業式のときに、校門でビラまきをしている人たちがいる。あるとき、その人と話したことがあった。彼は、中核派という政治集団を背景にしていた。
私が質問した。「あんた方は革マル派を襲撃して殺しているじゃないですか.殺人者のどこに正当性があるというのか」
その答えが、また驚くものであった。襲撃した行為を正当防衛と言ってきたからだった。私はすぐに反論した。こんな論拠に反論するのは赤子の手をひねるより簡単だ。小難しくリアリティのない言説をいう人や集団ほど、実は論理的には稚拙であることが多い。
「正当防衛っていうのはね、たとえば、今まさに、私があなたを殺そうとしている.そのとき、(最初から準備していたわけではなく)たまたまそこにあった石で反撃した.そうしたら打ち所が悪くて相手が死んでしまった.こういうときにしか言わないんだよ」
革マル派も中核派の人物を殺害したことがあるわけで、もちろん同罪だが、こんなときに「正当防衛」を言い出すところが実に怖い。自分たちこそが正当であると信じ込み、相手は権力とグルになっている敵だという。おもしろいことに、相手も同様な論理で攻撃しているわけで、自分たちこそが正しいとして相手を排除しようとするのは、まさに、他者の論理には盲目になって殺しあう宗教戦争以外のなにものでもない。
正当防衛だから相手を殺害することは必要なことだという論理は、反逆罪の名の下に数多くの仲間を殺害していったスターリンとどこがちがうのか。反スターリン主義といいながら、自分たちがまさにそのスターリン主義を行っている。自分たちが盲目になっていることに気がつかないのだろうか。
こういった人たちが、国旗・国歌の強制反対といって、私たち教員の仲間づらしてビラをまきにくる。仲間づらされたくはない。反逆罪をデッチあげて殺害していったスターリン、片や、正当防衛という屁理屈を言って人を殺す中核派(もちろん革マル派も同罪)。反逆罪といい正当防衛という屁理屈といい、どちらも自分の頭の中だけで正当だと思いこむでっち上げではないか。中核派も革マル派もスターリンそっくりだ。「反スターリン主義」とスローガンを打っていても、やっていることがそっくりでは喜劇にもならない。こういった人たちから援護されても、私ははなはだ迷惑だ。
ビラをまきにくる前に、自分たちがやってきたスターリンと同等の行為をしっかりと振り返ってもらいたい。
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旧東ドイツの政権政党で、独裁政党でもあった社会主義統一党。言論の自由を抑圧し、国民の相互監視体制すらつくっていった。権力のトップは、まさにミニスターリンのようであった。ベルリンの壁崩壊とともに、この党も解体されることになったのも当然といえば当然だろう。しかし、この党の内部から、悪弊を批判しスターリン主義的なあり方を否定して新生しようという動きがあったことが、せめてもの救いだった。
新生した党はPDS(民主社会党)という。写真の後ろの建物がPDSの本部だ。これがあの政権政党だったなのかと諸行無常の哀れさすら感じる小さな建物だった。しかし、今度こそ、本当に労働者や市民の側にたって行動するべく脱皮しているようだ。統一ドイツでの選挙で、そのたびごとに少しずつ議席を伸ばしていっているらしい。また、マイノリティにも目を配るような考え方を持っている。
トランスジェンダーの村長だったリントナー氏(それゆえにリコールされてしまったが)はこのPDSに所属している。現在は、ベルリン市の議員をやっていると聞くが、こういった人たちを受け入れる多様性と共生の特質に脱皮できているとしたら、こんどこそ本当にスターリン主義のくびきをたちきったといえるかもしれない。