No.102 日本の自然の多様性を愛おしむ・・・・本当の愛国心


 つくづく日本は広いと感じる。国土面積の話ではない。気候の多様性の幅広さを実感するからだ。いくつかの外国に行ったことがあるが、日本ほどの気候の多様性は感じなかったことも背景としてはある。
 例えばカリフォルニア。アメリカ全土と日本とを比較すれば、日本の25倍という広大な国土を有するアメリカは、それは多様だ。亜熱帯気候のフロリダから冷帯気候のシカゴまでの幅があれば、多様性はもちろん大きいだろう。といっても、日本も、沖縄と北海道とを考えれば、幅広さでは負けてはいないだろうけれど。ここでは、日本より少し広い面積のカリフォルニア州はどうだろう。
 真冬だというのに、木々や芝生は青々としている。日中だと、やや涼しすぎるかもしれないが、半袖であってもなんとか過ごせる気候だ。たぶん、カリフォルニア州には四季の移ろいははっきりとはないのだと思う。
 日本を考えてみる。沖縄と北海道とでは、両者にかなり気候のちがいがあるのは明瞭だろうが、それほど広くはない東日本の領域だけとっても、これだけちがうということを、今回のエッセイでは紹介したい。

←伊豆・下田の菜の花畑は今が盛り

 JR東日本から発売されている「土日フリーきっぷ」というのがあって、これは、土日の2日間、JR東日本管内の南半分を新幹線を含めて乗り放題で回れるというもの。南半分とはいうものの、日本海側は山形県の酒田、東北新幹線では仙台の先の古川まで行けるので、かなりの広範囲をフリーに乗れるきっぷである。金額は18000円。さらには、あなたが50歳以上であって、大人の休日倶楽部ミドルの会員になれば、期間限定とはいうものの、9000円でこのきっぷが購入できる。かなりのお買い得だ。
 私は、1日めの土曜日に、南伊豆の下田と河津を訪れ、2日めの日曜日には、山形新幹線の終着駅である新庄から、陸羽西線を利用して古口まで足を延ばし、雪景色のなかの最上川下りを体験してきた。最上川というのは、『奥の細道』を書いたあの松尾芭蕉が詠んだ「五月雨をあつめてはやし最上川」の句でも有名な川である。
←河津桜は、寒さのせいか、まだつぼみ状態だった

 下田と河津には、早咲きでピンク色が濃い河津桜が植栽されていて、2月上旬から咲き始めるという。「という」と書いたのは、私が訪れた2月11日は、まだつぼみ状態で1分咲にもなっていなかったからだ。今年は寒かったせいか、開花がかなり遅れているという。こんな年は今までにはなかったと、地元の方が言っておられた。
 河津桜のピンクと、菜の花の黄色のコラボレーションが、とてもきれいだ(というイメージを持っていた)。観光用の写真を見ると、確かに、春の息吹をまざまざと感じさせられる光景が広がっている。残念ながら、ピンクと黄色のコラボレーションを見ることはできなかったが、絨毯のように一面に黄色が広がっている菜の花を楽しむことはできた。今年は寒いとはいえ、確実に春はやってきている。春の足音を、東京の都心ではまだ感じることはできないのだが、ここ南伊豆では、しっかりと春が訪れていた。
←陸羽西線・高屋駅には、うずたかく雪が積もっていた

 ところが、翌日、12日に訪れた山形の最上川では、うずたかく積もり、しきりに降ってくる雪のなかで、依然としてモノトーンの、まるで墨絵のような雪景色が、私を迎えてくれたのだ。春の訪れなど微塵も感じることはできない。吹きすさぶ雪のなかで手はかじかんでしまう。ローカル列車やバスの車窓からは、吹きすさぶ雪で視界がほとんどない。この地の気候は、まさに冬一色だ。
 南伊豆と山形の最上川、いずれもJR東日本管内の領域。下田から古口まで、伊豆急と東海道線のスーパービュー踊り子、山形新幹線・つばさ、ローカル列車と乗り継いでいけば、半日でも移動できてしまう。なのに、片や春の装いが街をつつみ、他方では厳しい冬景色のまっただ中にある。なんと日本は多彩なのか。本当に実感としてそう感じてしまう。
 年末・年始のころアメリカ西南部地方を訪れたのだが、120Kmのスピードでハイウェイを6,7時間走っても、たいして景色が変わらないカリフォルニア。ロサンゼルス郊外でもラスベガス郊外でも、カリフォルニア、ネバダ、アリゾナと走っても、都会の郊外に出ると、なにも利用されていない、背の低い灌木がまばらに生えただけの砂漠が延々と続いている。600、700Kmを移動しても(下田と最上川との距離は、この半分ぐらいだろう)多彩さはまずない。ところが、日本は、かようにも多彩な光景を目にすることができる。

 日本の自然のすばらしさ、美しさを、まさに肌身で感じることができる。外国を見て、そして日本を振り返ると、人は誰しも愛国者になってしまうという。
 少しも悪くはない。外国と比べて、自分の国のよさ、すばらしさを再認識することは、むしろ大切なことだとも思う。問題は、遮二無二「愛国」を強要しようとする偏狭なナショナリストたちの姿勢にある。
 誰だって、自分の故郷である日本のすばらしさを「感じとる心」を持っているはずなのに、単なる象徴物にしかすぎない君が代や日の丸に対して、唱えや崇めよと、その窮屈さに異を唱える人たちに処分をかけてまで強制しようとするあり方は、すばらしさを「感じとる心」を、むしろ抑圧しようとしているのではないかとすら思えてくる。どんなにおいしい料理でも、「食え、食え、食わなければ罰を与えるぞ」と強要されれば、おいしい料理であってもそのうまさを感じなくなってしまうにちがいない。
 君が代や日の丸という象徴物にしかすぎないモノに、異様なまでにこだわり強制しようとする人たちは、どう考えてもフェティシズムにしか思えない。私は、フェティシズムは少しも悪くはないしその人の「らしさ」の一部でもあると思っているのだが、自分だけで悦に入るのではなく他人にまで強制しようとするとなると、もはや病気だとしかいいようがない。鞭で打たれることに快感を感じる人が、そうとは感じない人にまで鞭を強制すれば、これはもはや犯罪だろう。君が代や日の丸についても同じだ。崇めて、ジーンとした快感に浸る人がいてもいい。しかし、他人にまで同じことを押しつけたら、これは犯罪ではないのか。
 私は、多様な自然を有する「美しい日本」をあらためて実感し、そして、その日本を愛おしく思うひとりだ。この日本の「美しさ」を守り育てていかなければならないとも思っている。しかしそれは、単に、君が代や日の丸というモノを崇め奉ることとは全くちがう。

最上川の川下り.墨絵のようなモノトーンの世界→

 多様な自然と、それに関わる「まつり」などの文化、地方文化の多彩性を守っていくことなど、「日本はすばらしい国なんだなあ」と感じとれるような国や社会をつくっていくこと。それが私の「愛国心」だと思っている。
 たたかって国土を荒廃させたこと。日本の「(文化も含めた)美しさ」を近隣の国々の人たちにわかってもらう前に、日本はひどい国だという誤解を与え続ける一部の政治家の言動、そしてそれを煽る偏狭なナショナリストたち。こういったことをやっている人たちが、どうして「愛国者」なのだろうか。口先だけ「愛国」を言っていれば「愛国者」であるのではない。君が代や日の丸を唱え崇めよということが「愛国者」なのではない。ここのところを勘違いしないでもらいたい。文化や自然も含めた日本のすばらしさを愛おしく思い、それを大切にしていこうという心構えを持つことに「愛国者」たるゆえんがあるのだと思う。
 君が代や日の丸を強制しようとしている人たちと比べて、私の方がはるかに「愛国者」だという自負がある。
 君が代や日の丸を強制しようとしている人たちには、素直に、自分の内面をみつめてもらいたい。あなた方は本当に日本を愛しているのですか、と。日本がやっていることに反発を感じて、それに抗う他国の国民を「しゃらくさい」と考えたり、本当は自分の私益の気持ちが背景にあるのに、「君が代や日の丸を唱え崇めろ、そうしないやつは愛国心がない」などと言うことで、自分のよこしまな気持ちを糊塗してはいないだろうか。
 だいたいは、他者に「こうあるべし、それが崇高な姿勢だ」などと言う輩にかぎって、実のところ、自分の心にはよこしまな気持ちがあるものだ。「自分のためにやっているのではない。私が株主のことを考えていないように見えますか」などと大見得を切ったホリエモンが実のところどうだったのか。偉そうなことを言っていたウルトラ保守の元西村代議士だって私益が背景にあったではないか、などなど、声高に他者への強制を求める人ほど、自分の私益を糊塗するための偽装の態度であるということを、これまでの数多くの事実が語っていると、私には思えてならない。

 日本の自然の多様性を感じとり、それをすばらしいと愛おしく思うこと。こういった本当の意味での「愛国心」が、フェテイシズムを強要するかのごとくの偽りの(まさに偽装の)「愛国心」である君が代や日の丸を強制することがらと置き換わってもらいたいと思いつつ、土日フリーきっぷを使った旅行のエッセイにしたい。



【参考】今回の旅行を、正規運賃と特急料金で計算した場合の金額

(1) 東京→伊豆急下田・・・・・・・・・・・・・・・・・6090円

(2) 伊豆急下田→河津・・・・・・・・・・・・・・・・・880円

(3) 河津→新宿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6220円

(4) 東京→新庄・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12510円

(5) 新庄→古口・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・320円

(6) 古口→新庄→鳴子温泉→古川・・・・・・1890円

(7) 古川→東京・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11110円

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                合計      39020円

●一般の土日フリーきっぷ(18000円)ならば、21020円のおトク

●大人の休日倶楽部ミドルの土日フリーきっぷ(9000円)ならば、30020円のおトク

 すごくトクした気分になりますよね。贅沢な旅行ではなく、安くて、しかし賢く旅行する。こういう方法を探し出すのも旅行プランを考える醍醐味なのだと思います。