No.52 長崎で出会ったすてきな人たち
長崎で出会ったTSの大学の先生 長崎の地で、性教育に携わっておられる先生方との交流
「性教協(人間と性 教育研究協議会)長崎サークル」と「命とからだ探検隊塾」の2つの性教育関係の団体からお声がかかり、2003年1月下旬、長崎市内でお話しをする機会がありました。
私の話を聞きに、高嶋幸世さんというトランスセクシュアルの方が、ここにいらっしゃっていました。私の講演時間内にも質問をされましたが、講演後、高嶋さんとお話しする機会がありました。高嶋さんのことは、それまでにも、名前は耳にしていたようですが、交流はありませんでした。今回が初めてです。
なんと、私と同じ熊本県の出身とのこと。中学校から、鹿児島のラサールに行き、その後、東京大学に進学されています。ラサールでは、ピーターの後輩だということだそうです。九州の方でしたらおわかりだと思いますが、少し状況を説明しておくと、熊本県内の並みの秀才は、だいたいは、県立の熊本高校に進学して成績がよければ東大や九大へというコースが一般的です。ただ、特段たる秀才になると、隣県の私立であるラサールに行くコースをとるケースが出てきます。高嶋さんはまさにこのケースです。同じ熊本で育ち、ここらあたりの状況を知っている私にとっては、「すごーーい」の一言。しかし、このエッセイで語りたい「すごーーい」というのは、彼女の学歴のことではありません。
熊本大学大学院教育学研究科で「女性」のポジションで講師をされ、さらに、講演や執筆活動をなさっているということにあります。三橋順子さんが、中央大学でトランスジェンダーをテーマにした社会学の講師をされていたというのは週刊誌などでも報道されました。高嶋さんの場合は、トランスジェンダーに関わることというのではなく、全く普通の学問分野で、「女性」のポジションとして勤務するという道を開かれたというところに、またひとつの発展形態を見た気がしました。
彼女は、東大卒業後、同志社大学博士課程を修了し、西南学院文学部専任講師として勤務し、その後、某大学の新設学部の助教授として招聘される内定をもらっていたものの、彼女の「女装癖」を問題として、就職の内定が取り消されたという経歴をもっているそうです。現在でも、トランスジェンダーが望みの性別で勤務していくのは困難な状況がありますが、しばらく前であれば、「女装する男性」というだけで奇異な目で見られたということは想像に難くありません。しかし、熊本大学という国立大学で、女性のポジションで勤務するということを実現されたのは、もちろん、彼女の学問の力量があってのことなのでしょうが、トランスジェンダーの歴史にとってはひとつの快挙だと思いました。
芥川賞受賞の藤野千夜さんはトランスジェンダーの作家。こういったポジションにトランスジェンダーが進出したのは大きい成果です。しかし、これは自由業の分野でもありました。高嶋幸世さんや三橋順子さんは、大学の先生という、自由業ではない分野への進出という意味で、ひとつの歴史を開いたと思います。
ここまでは実現できました。まだ開かれていないところとして、教授、助教授といった大学の専任、そして、小・中・高のような大学以外の教育機関での勤務、そして、銀行や商社などのビジネス分野があります。こういった分野にもトランスジェンダーが普通に進出できていくことで、「夜の接客業だけではないトランスジェンダーの就職」が実現できる道筋が開かれることになるでしょう。
逆の側に戸籍を変更することで、こういった分野にも就業できるようになることも、ひとつの道かもしれません。しかしそれだけでは、戸籍の変更を実現できない人たちにとっては、依然として就業の道は閉ざされたままです。高嶋さんのような人たちが頑張って、戸籍の性とはちがったジェンダーで就業できる道筋をつけていくことは、多くのトランスジェンダーにとっての福音になることはまちがいありません。
がんばってね、高嶋幸世さん。
長崎でのお話しの前日、くじら肉が美味しいお店(長崎はくじら肉を食べることができるお店がけっこうあるようです)に私を招待してくださり、ジェンダーに関わる話で盛り上がりました。本当に、みなさん、心が温かいすてきな方ばかりでした。教育関係に携わっておられる、こういった性教協の方によって、しっかりと自分の生き方と性をみつめて、自分を大切にできる生徒を育てていっているのだなあということを学ばせていただきました。同じトランスジェンダーの仲間が、いろんなところで活躍している姿を見て、なんだかうれしい気持ちで帰京してきたのですが、1月30日号の「週刊新潮」を見て、また暗鬱な気分に引き戻されました。
「『ジェンダーフリー』教育の元凶」のタイトルの記事で性教協が攻撃され、そして、トランスジェンダーの当事者である三橋順子さんがゲストスピーカーとして足立区立11中で行った授業についても攻撃されています。さらには、2003年1月27日の産経新聞「解答乱麻」では、高橋史郎氏が、国立市のジェンダーフリー教育や、インターセックスなどのことについても、しっかりと教えていくという実践を、性教協との結びつきで攻撃されていたからでした。
当事者である三橋順子さんの実践はもちろんのことながら、私たちセクシュアルマイノリティのことをしっかりと受けとめて、マジョリティと同じように共生していく存在として、教育のなかで話していこうという真面目な取り組みをしているのが性教協であり、その会員の方なのです。しかし、最近、性教協へのバッシングが行われている状況をみたとき、私たちへの理解が徐々にすすんできたことへの逆コースが始まっていくのではないかと危惧しています。
この状況のなかで、多様な性や生き方、性と人権というとらえ方には目を向けず、戸籍の性別変更さえできればすべて解決だ、などという狭い発想ですすめば、性別2元的な発想は変わることなく、戸籍変更にはいたらない人たちにとっては、依然として住みにくい世の中が続くことになるでしょう。
戸籍の性別変更をすすめる運動は、ぜひ、こういった、多様な性のありかたをやさしく受けとめてくれる流れとドッキングしてやってもらいたいと強く願っています。
ジェンダーフリーや多様な性のことを、自分たちの問題として考えていっている性教協の人たちが、力強く頑張ってくれることを願ってやみません。
産経新聞や週刊新潮での、ゆえない、そして「嘘八百」「ねじ曲げ表現」ともいえるバッシングに負けるな!!
もちろん私も、性教協の一会員として、嘘や誹謗中傷などとは、敢然としてたたかっていきたいと思います。
このホームページが、週刊新潮や産経新聞の発行部数を超えるアクセス数になるように応援してください。卑劣な大手マスメディアに負けるわけにはいきません。
性教協の長崎サークルと「命とからだ探検隊塾」が主催した講演会で話す私です。
「性教協(長崎サークル)」「命とからだ探検隊塾」の主催で話したときの感想を、主催者側が集めてくださいました。掲載させていただきます。参考にご覧下さい。
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