No.44 セクシュアルマイノリティと人権

「社会主義」(9月号)誌(発行:社会主義協会)に、私の文章が掲載されました

日本の人権意識の一断面から            宮崎留美子

セクシュアルマイノリティと人権

 つぎは、日本共産党の機関誌「前衛」からの原稿執筆依頼をお待ちしています。
 私は、セクシュアルマイノリティの問題への理解を広げていくためには、狭量な党派意識はもちません。多様な性、個人の人権を尊重し多様な人たちの共生を支持するところであれば、自民党や民主党、公明党、社民党などの機関誌・紙からの原稿依頼も大歓迎します。
 掲載誌は、現在発売されている号ですので、私の文章そのものは、ここでは掲載できません。ぜひ「社会主義」誌をお買い求めください。税込み580円
※問いあわせは、社会主義協会本部(編集部) TEL:03-3221-7881、FAX:03-3221-7897

 社会主義協会といっても、今の若い人たちは、名前も聞いたことがないでしょう。年配の方だと、名前ぐらいは聞いたことがある方もいるかもしれませんが、政治にそれほど関心がなければ、とくに頭に残っているような団体ではないでしょう。
 まだ、日本社会党(現在、その後継の党は、社会民主党)が健在のころ、この党内には、左派と右派の勢力が存在し、両派が路線闘争をくりひろげていました。ありうべき社会主義像とは一体何かから始まって、日本の資本主義にたいする評価、ソ連や中国をどうみるか、西欧社会民主主義の党をどのように評価するかなど、論点は多岐にわたっていました。このなかで、いわゆる「最左派」と呼ばれていましたが、社会党内の最有力な思想集団だったともいえます。
 また、同じく、社会主義を標榜する日本共産党と、日本におけるマルクス・レーニン主義の適用は、どちらの主張が正しいのかという論争も行っていました。左翼陣営内部からの日本共産党への理論的批判を展開する、もっとも有力な団体でもありました。
 労働組合への影響力も大きく、「社会主義協会派(略称 協会派)」が主導権を握る組織もけっこうありました。私たちのところの組合も、この協会派の影響力は大きく、執行部メンバーのなかに何人も、そうだと目される方がいらっしゃったものでした。しかし、この思想団体は、ソ連社会主義への傾倒が大きく(少なくとも、私は、この団体が、ソ連崩壊前の段階で、ソ連社会主義をしっかりと批判した文章は見たことがない)、東欧共産党政権の崩壊・ソ連邦の崩壊という時代の流れのなかで、組合や社会党(社民党)への影響力が低下していったことは否めません。私たちのところの組合の幹部でも、それなりの人が離れていったように感じています。
 しかし、離れていった活動家がそれなりにいたにせよ、現に、今、私たちの社会でのさまざまな矛盾が消えたわけではありません。そういった多くの問題点を真摯に分析し研究して、抑圧されている側の立場でものごとを考えていこうという姿勢には、私は敬意をもって接していきたいと思っています。
 多数派の陽の当たるところにばかりいようとして右顧左眄し、これまでの自分の言動すらも、なんの自己批判もなく180度変えて(自己批判した上で変えるのであれば一向にかまわないが)、力の強いものにおべっかを使うような人を何人も見てきました。こういった寂しい人間の性(さが)のなかで、私が全面的に支持するかどうかは別としても、少数派であってもしっかりと自己主張し続ける社会主義協会には、エールを送りたいと思っています。
 私も少数派の性のありようです。そして社会主義協会も、この時代に依然として(敢然として)「社会主義」を掲げる少数派です。なにか通じるところがあるのかもしれません。

 この社会主義協会の機関誌「社会主義」の編集部から、「セクシュアルマイノリティと人権」というテーマで小論を書いてほしいとの依頼がありました。
 あの、社会主義思想バリバリの社会主義協会からの申し出に、率直にいって、私は驚きました。ずっと前のこと(20年以上前)ではあるのですが、ゲイの東郷健氏に、「社会主義になれば、お前の病気は治る」と言ったのが当時の社会主義協会の代表の方でしたから、その社会主義協会から、私のような「オカマ」に小論を書いてほしいとの依頼がくるとは、想像すらできませんでした。私のようなセクシュアルマイノリティと「社会主義」とは、ひょっとしたら最も縁遠いのかなとすら思っていたときがあったからです。
 自分の欲望で思いのままに自由にできる社会が資本主義、一方、社会主義は、個人の欲望を抑圧される体制じゃないかとの思いが頭をよぎったこともありました。しかしこの見方は、いろいろと学んでいくうちに誤りだとわかってきました。
 資本主義国家であるところで、セクシュアルマイノリティが抑圧されている国はけっこうあります。アメリカでも、とくに南部では、命の危険にすら直面しています。実際に殺されたケースもありました。
(※)映画「ボーイズ・ドント・クライ」は、殺害された性同一性障害者(女から男)をテーマにした映画で、本当に涙を誘い、同時に憤りを感じさせてくれる映画です。アメリカの南部の実話をもとにしています。
 一方、社会主義を標榜している中国にも、トランスジェンダーがいるということがわかりっています。当然に、偏見はあるのでしょうが、アメリカ南部のように殺される危険性については、あまり聞きません。
 個人の幸福追求権をはじめ、いろいろな人権が尊重され、多様なあり方の人たちが共生していける社会のあり方は、はたしてどういうしくみであるのか−−−この視点から、私たちの社会を考えていく必要があると思っています。自民党が考えるしくみと思想が、人権と共生をよりよく実現してくれるのであれば、私はそちらを支持するだろうし、また、社会主義協会が考えている方が実現してくれるのであれば、私はこちらの方を支持することになるでしょう。もちろん、日本共産党がやってくれれば、これも大いにけっこうですし支持したいです。
 ともあれ、現時点では、「社会主義」誌が、「セクシュアルマイノリティと人権」というテーマで、私の文章を8ページにわたってとりあげてくれました。400字詰めの原稿用紙に換算すると20枚以上の分量になります。ちょっとしたコラムということではなく、「日本の人権意識の一断面から」というなかで、しっかりととりあげられています。ドラァグクイーンの写真も載っていますが、社会主義の理論誌に、ドラァグクイーンのような性的パフォーマンスの文化を著す写真が載ったことは、私が知るかぎり初めてだと思います。社会主義の理論誌とセクシュアルマイノリティが結びついた第一号ではないでしょうか。私の文章を掲載する決断をされた編集部に、セクシュアルマイノリティのひとりとして感謝したいと思います。同時に、今後とも、この問題に関心をもっていただけるようにお願いしたいです。

 社会主義理論誌としてのもうひとつの大所である、日本共産党の機関誌「前衛」でも、セクシュアルマイノリティについて、大々的にとりあげてもらえれば幸いだと思っています。

掲載誌:「社会主義」(2002年9月号)

特集 日本の人権意識の一断面から

・国際人権条約を日本でどう実現するのか(国際人権研究家 小山内 恒)
・パートタイムの処遇は人権問題(なのはなユニオン委員長 鴨 桃代)
・滞日外国人の労働問題をたたかう(神奈川シティユニオン書記長 村山敏氏に聞く)
・移住女性の人権侵害から見えてくるもの(女性の家HELPディレクター 大津 恵子)
セクシュアルマイノリティと人権(トランスジェンダー 宮崎留美子)
・コンピューターリンケージの恐怖(明海大学教授 横本 宏)