No.39 埼女、留美子のトークグラフィティ

埼玉女子短大
留美子の
トークグラフィティ

 

※ここに掲載されている写真は、埼玉女子短期大学の学生さんが撮ってくださったものです。

 2002年、5月末、埼玉女子短期大学の宮淑子先生の「女性学」の講座に呼ばれ、「トランスジェンダーとして2つの性を生きる私」という題でお話ししてきました。
 生物学的性・性自認・社会的性・性的指向の解説からはじまり、その組み合わせによって、いくつかのカテゴリーの性のありようがあること。さらに、カテゴリーといっても、はっきりと区分される境界があるわけではなく、その中間項がたくさん存在しており、性のありようは、まさに多様であり、カテゴリー間はグラデーションになっていることを説明してきました。

 埼玉女子短大(埼女)の学生は、人なつっこい。「写真を一緒に撮って」とせがまれ、私も楽しく一緒に写らせていただいた。
 偏差値競争の勝者である東大の女子学生も、もちろん大切な存在だ。要領よく点数をとる能力は決して馬鹿にはできない
(※)。でも、この社会を形成している人たちがさまざまにいて、それだから面白いのだと思う。東大の学生のような人ばかりだったらつまらない。多様な人たちがいないと、ダイナミックに社会が発展することはないだろう。
 私は、この埼女がとても好きになった。学校関係者とも話したが、少しも官僚的ではなく実にアットホームであった。
 後日、勤務校の進路担当教員に埼女のことを聞いたところ、就職へのケアもていねいだとか、ユニークな講座があるなど、とても高い評価を語ってくださっていた。大学への進路指導を、偏差値だけで行うというような態度は、高校教員として戒めなければならないと思う。これは、自分自身への自戒でもある。
(※)東大の女子学生への愛情をこめた痛烈な批判は「サヨナラ学校化社会」(上野千鶴子著2002年4月、太郎次郎社)に詳しい

 埼女でお話しする数日前、専修大学で話したことでもあるのですが、性同一性障害の人が、自分の性の違和感をどのように解消していくかには、いろいろなパターンがあることを話してきました。
 ひとつの事例として、98年にNHKテレビで放映された山本さんというMTF(男から女へ)の方のことを語りました。ちなみに、山本さんのことは、東京都が作成した人権啓発のビデオにも収録されています。
 この方は、どう見ても、外見は男性、化粧したりスカートをはいて生活しているふうでもありません。最初にテレビ画面をみたときに、『なんでこの人が性同一性障害なの?』と思いました。MTFであったら、ジェンダーを女性として生きていくことを求めるのが当然だろうと思っていたからです。
 しかし、声については、実にきれいな「女性の声」を出します。電話などで、姿を見ずに声だけを聞いたならば、100%、女性と思うでしょう。山本さんは、声が女性であることで、自分のアイデンティテイをもっているということなのだと、今ではよく理解できるようになりました。
 私は、化粧したりミニスカートをはいて、過剰に女性記号を身につけることでアイデンティティを保っているわけですが、どういうあり方で、自分の違和感を減じていくかという、様々なパターンとひとつだと解釈することで、ストンと私の心の中に収まったのです。
 胸を膨らませたり、ペニスに強い嫌悪感をもちヴァギナを持とうとしたりする人たちもいます。こういう人たちは、性器を変えることで、自分の違和感を減じていると考えられます。
 性の違和感を軽減する方法はまさに多様です。だからこそ、性同一性障害(トランスジェンダー)の人たちは、一見、全くちがつたようなあり方に見えることがあるのだと思っています。しかしそれは、違和感が重い/軽いではなく、解消法に多様さがあるということの表れだと考えるのです。
 この他にもいろいろと話しましたが、埼女の学生さんは、どこまで理解してくれたでしょうか。

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