No.19 性同一性障害についての誤解(タイトルは宮崎留美子による)

 私のところの掲示板(宮崎留美子の掲示板)への書き込みで、TS/TGに関わる問題で、私の意見ともほぼ同じ見解をもつ書き込みがありました。
 内容も、これまでのトランスジェンダーをめぐる歴史的過程もふまえた理路整然とした内容になっています。
 掲示板だと、次から次への書き込みのなかに埋もれてしまい、また、書き込み数もかぎられていますので、そのうちには削除になってしまいます。せっかくの、なかなかよい見解ですから、恒久的に残しておきたいということで、私のホームページのエッセイコーナーに収録しようと考えました。
 私自身のエッセイではありませんが、私も同意している見解のエッセイとして、みなさまに読んでいただきたいと思っています。
 ただ、性同一性障害などのことについて、ほとんど知識がない方にとっては、なんのことやら意味がわからないかもしれません。それでも、私たちのような系統のホームページをめぐっているうちに、このエッセイの意味がわかるようになるかと思っています。

★「真のTS」という危うい主張

 どうも最近TS(※1)と名乗る方の逆差別が目に余るので、TSという概念の功罪についてお話します。
 そもそもTSという概念はSRS(※2)手術を望む人、あるいはSRS手術を受けた人という医療用語として生まれた筈です。ところが、ある時期(4、5年前?)にフルタイムをしている方から、「下着女装者」の方を指して「貴方は本当のTSじゃない」という指摘が起こり、「真のTS」と「偽TS」なる概念が出てきました。
(※1) TS ・・・トランスセクシュアル、生物学上の性を肉体レベルでも変えていこうとする人たち
(※2) SRS・・・性別再指定手術、俗に言う性転換手術
 「偽TS」としてやり玉に挙がったのは、最初「下着女装者」という方のみでしたが、次第に範囲を広め、ニューハーフ等の水商売や風俗に就く方やパートタイムの生活を送られている方をターゲットにし、果ては埼玉医大等の医療機関でGIDの診断書をもらっていない方にまで広がっていきました。
 これらの過程を詳しく説明すると、「下着女装者」はフェティシズム系の所謂男性の感覚で女性の下着を身につける変態と見なされ除外され、ニューハーフは「究極の男性の職場だから女性なら勤めないし、勤められない」という考えで除外、パートタイムの方は「真のTSは24時間ずっと望みの性別での生活を送らないと生きていけない」という考えで除外、診断書無しの方は「自称TS」という考えで除外という風な感じでしょうか。
 で、最近にわかに除外対象として見え隠れしているのが「真のTSならパスできる」という考えに基づいた「パスできない者は偽TS」という考え方ですね。
 埼玉医大に通う患者には恋愛対象が女性である方が非常に多いですから、取り敢えず表向きは「性自認と性指向は別物」という考え方で辛うじてクリア、でも「恋愛対象が男性のみ」である方からは「性自認と性指向が一致しない者は偽TS」として除外されている様子。
 要するに、どんどん許容範囲を狭めて、いつかは自分自身をも否定してしまう悪魔思想が出来上がるわけです。
 始末に悪いのが、こうした思想の根底には自己の立場を肯定するために、他者の立場を否定するという考えがある事です。即ち最初に自己肯定という結論があって、その為の理由付けが後から付いてきたと言うことです。
 こうした事を考えると、もうTSという考え方は必要ないのではないでしょうか? 差別を生む温床になりこそすれ、有益な結果は殆ど生み出していませんから。他者を認め自分をも認められる「広義のTG」という概念のみで十分でしょう。
 このような考えに陥っている方は、はっきり言って集団催眠に掛かっています。どこかで始まった「真のTS」論議に毒されています。
 はやく催眠から目覚めましょう。でないと最終的に自分と同じ立場の人間は誰もいなくなり、他者は全員「偽TS」という考え方に陥りますよ。


★ニューハーフをGIDではないと主張する危険な誤り

 医学も法も未熟な時代はGIDに対する理解なんて何もないに等しいものでした。この頃に望みの性を求めた人は、周りの扱いを度外視して水商売や風俗に身を置き、特定の空間の中で自分の性を表現するしか術がありませんでした。
 その後、埼玉医大の答申を境に、とりあえず医学的には病気であるとの大義名分ができれば、それまでじっと自分の殻の中に閉じこもっていた人達が、突然名乗りを挙げて立ち上がっていきます。
 すると、ここに一つの内部差別が生まれたのです。それは今まで人生を水商売や風俗にかけてしまい、それ以外の職に転職する機会を逸してしまった人に対して、とりあえず戸籍上の性別で働き一般の社会で使える仕事上のキャリアを積んできた人が、突然、
「本当の女性ならそんな所で働かない、だからそうした所で働く人は男に違いない」
って批判を始めたのです。
 そんな所で「働かない」のではなく、「働くしかなかった」の間違いなのに・・・